色が見える!?「画家の小説」を読んでみませんか?
新型コロナウイルスの感染者数増加による外出制限にともない、作品を実際に見るというアート体験の場が少なくなっています。今後も大型イベントや企画展は中止あるいは人数制限がかかり、アート鑑賞の機会はますます減っていくことが予想されます。
しかし、ものは考えようです。自宅にこもりがちなこの期間を使って、アートへの理解を深める準備をしてはどうでしょうか。これまで美術史や美術鑑賞のガイド本を手にとって、アートを勉強しようとされた方もたくさんいらっしゃることでしょう。たしかに美術史の知識は正しく学べばアート鑑賞を豊かにしてくれます。でも、独学で学ぶには限界もあります。また、学校の勉強をしているような、少し堅苦しい気持ちになった方もいらっしゃるかもしれません。
アートの鑑賞体験を深めるための一番の近道は、アーティストの生の声を聞くことです。アートを勉強しようなんて思わずに、アーティストが制作に際して考えていることや、手や目の動かし方を見聞きすることで、これまでとは違った角度から作品に接近することができるのです。
とはいえ、身近にアーティストがいて話を聞けるというような、恵まれた環境にある方はあまりいらっしゃらないと思います。今はインターネットや美術雑誌で、アーティストのインタビューなどを読むこともできますが、情報は断片的でアーティストの制作をトータルに追いかけることは難しいでしょう。
そこでおすすめしたいのが、アーティスト自身が文章を書いている「本」です。作品をビジュアルとして楽しみたいのであれば作品集がおすすめですが、今回の目的は「アーティストの思考や制作過程を知ること」なので、作品図版がメインの作品集よりも、文章がメインになっている本がベターです。しかも難解でなく、読みやすいもの……。アート専門出版社アートダイバー がおすすめするのは……。
おすすめ本:小林正人著『この星の絵の具』(上・中巻)。
国際的に活躍するアーティストの小林正人が書いた小説です。自伝小説の形式で3部作の構成、現在中巻までが発売されています。最近では、東京都庭園美術館で開催された「生命の庭」展で、その作品をご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。
小説なので、当然物語の形式をとっていますが、フィクションではなく全てが小林の記憶にある事実を元に書かれています。
この小説の魅力のひとつは、その没入感にあります。この本を読んだ方の多くが、その独特の文体を読み進めるうちに、あたかも画家と一体化したような感覚を覚えたといいます。読み手もまた画家と一緒に手を動かし、作品をつくっていく。これこそ、新しいアート体験ではないでしょうか。
とくに、日本を代表する画家が書いた小説だけあって、物語のところどころで情景が色をともなって見えてくる描写があります。画家によって認識される世界は、ふつうの風景であっても光り輝いて見えているようで、そんな画家の目を追体験できる楽しさもあります。
この本を読み終えたあとに、実際の作品を目の前にしたとき、これまでには見えなかったものが見えてくるはずです。
アートPRのプロであるMaikoさんも絶賛!
文春オンラインにも著者インタビューが掲載されました!
「美術手帖」元編集長の楠見さんにも愛読していただいています。
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