アーツ前橋『潜在景色』(図録)

アーツ前橋『潜在景色』(図録)
アーツ前橋『潜在景色』(図録)

石塚元太良、片山真理、下道基行、鈴木のぞみ、西野壮平、村越としや
これからの写真界を牽引する30歳代から40歳代の実力派作家6名による展覧会の公式カタログ。

撮り下ろし新作を含む、メディア未発表作品を多数掲載。

 

¥ 2,750

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「見えるもの」と「見えないもの」は、芸術における根源的なテーマですが、優れた写真にもまた、被写体に潜む何かをとらえる力があります。雄大なランドスケープ、身近な街の風景、何気ない日常生活をとらえた写真が、単なる視覚表現をこえ、その場所の歴史や社会的背景、記憶の痕跡を鑑賞者に想起させるのです。

本作品集では、こうした写真の力に着目し、「潜在景色」というタイトルに表しました。作家それぞれが独自の視点でとらえた景色を、多様な手法で表現します。見過ごされているものや、場所が内包するものへと眼差しが向けられることで、見慣れた自然や街、日常の風景の中に潜在的な景色が現れてくることでしょう。

書名:『潜在景色』
編著:アーツ前橋
写真:石塚元太良|片山真里|下道基行|鈴木のぞみ|西野壮平|村越としや
ページ:144ページ
製本:並製本
サイズ:B5判(257×182mm)
デザイン:木村稔将
ISBN:978-4-908122-21-7
2022年11月下旬刊行

目 次

はじめに

図版
下道基行
村越としや
石塚元太良
西野壮平
片山真理
鈴木のぞみ

論考・資料
写真のなかの「潜在景色」|サンドラ・S・フィリップス
潜在景色|北澤ひろみ
作家略歴
作品リスト

石塚元太良 
1977年生まれ、東京都出身・在住。
パイプライン、氷河、ゴールドラッシュなどを特定のモティーフとして独自のランドスケープを世界中で撮影するスタイルは、コンセプチュアル・ドキュメンタリーとも評され、ドキュメンタリーとアートの間を横断するような手法で、時事的な話題に対しての独自のイメージを提起している。近年は、印画紙による立体物や、多層に印画紙を編み込んで制作するモザイク状の作品など、写真が平易な情報に取り込まれているSNS時代の写真表現における、空間性の再解釈を促すような作品を制作している。2004年日本写真協会賞新人賞、2014年東川写真新人賞を受賞。2011年には文化庁在外芸術家派遣員としてフィンランドで滞在制作を行う。 2022年には「Domani・明日展2022-23(国立新美術館)」にも参加予定。
本作品集では、廃業したガソリンスタンドを同じフォーマットで撮影し続けている最新シリーズを発表する。群馬県内でスタートした同シリーズの撮影は全国的な展開をみせている。

片山真理 
1987年生まれ、群馬県出身・在住。
2012年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。先天性の四肢疾患により9歳の時に両足を切断。身体を模った手縫いのオブジェや立体作品、装飾を施した義足を使用しセルフ・ポートレイト作品を制作。自身の輪郭をなぞれば、他者に続き、小さな暮らしから社会、世界へ、糸と針はパッチワークのように様々な境界線を縫い繋げていく。「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 企画展」(2019年、ヴェネチア)、「あいちトリエンナーレ2013」(2013年、愛知)などの国際展へ参加、2021年にはヨーロッパ写真美術館(パリ)で個展「Home Again」が開催されるなど、国内外の展覧会に多数出品している。第45回木村伊兵衛写真賞を受賞(2020年)。
本作品集では、2014年と2015年の2回にわたり、アーツ前橋の竪町スタジオにレジデントとして滞在し、前橋の商店街やスタジオで撮影した作品を中心に発表する。

下道基行 
1978年生まれ、岡山県出身、香川県在住。
日本国内の戦争遺構の現状を調査する「戦争のかたち」(2001-2005年)、祖父の遺した絵画と記憶を追う「日曜画家」(2006-2010 年)、日本の国境の外側に残された日本の植民/侵略の遺構をさがす「torii」(2006年-)など、展覧会や書籍、ワークショップなどで発表を続ける。フィールドワークをベースに、生活のなかに埋没して忘却されかけている物語や日常的な物事を、写真やイベント、インタビューなどの手法で編集し視覚化する。2019年「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館」参加作家。「Re-Fort Project」(2004年-)、「新しい骨董」(2014年-)、「旅するリサーチラボラトリー」(2015年-)など、グループ/コレクティブでのプロジェクト活動も多い。2019年より《瀬戸内「 」資料館》を企画・監修し、「館長」に就任。
本作品集では、新たに前橋で見つけ撮影した「橋」を加えた〈bridge〉のほか、ワークショップ「見えない風景」を掲載。

鈴木のぞみ 
1983年生まれ、 埼玉県出身・在住。
写真の原理を通して、何気ない日常の事物に光の痕跡として潜む潜像のような記憶を可視化することを試みている。2011年頃より、窓ガラス自体に窓越しの風景を直接焼き付ける作品制作や、扉の鍵穴など生活環境の中の「穴」を利用したピンホール印画の作品の制作など、日常生活のなかに在る多岐にわたる事物を制作に用いている。窓ガラスや鏡、食器、望遠鏡、メガネなどに直接定着されたイメージは、かつてそれらが在った場所において人知れず生成されていたイメージであり、日常の風景が主観を越えた視点でとらえられている。2018年にはポーラ美術振興財団在外研修員としてイギリスにおいて研修、2022年、東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。
本作品集では、前橋市内中心地で取り壊される直前のかつて理容店兼住居であった建物の窓ガラスや鏡などから見えていたであろう風景を撮影し、その場所に流れていた時間やそこでの記憶を想起させる新作を発表する。

西野壮平 
1982年生まれ、兵庫県出身、静岡県在住。
世界中の都市を自らの足で歩き、撮影した膨大な写真を、自らの旅の記憶をもとにコラージュし、作り上げる独自の地図、〈Diorama Map〉シリーズを長年にわたり制作し続けている。近年はイタリア北部を横断する川「IL PO」や、「東海道」、「富士山」などさらに対象の幅を拡げ、意欲的に制作活動に取り組んでいる。ICPトリエンナーレ(2013年、ニューヨーク)への参加や2016年にはサンフランシスコ近代美術館で個展が開催されるなど、国の内外で多くの展覧会に参加している。キヤノン写真新世紀優秀賞(2005年)、日本写真協会新人賞(2013年)など、受賞も多数。
本作品集では、「利根川」をテーマに約 2 年間をかけて大水上山の源流から山間部、前橋市内を経て、群馬と埼玉の県境に沿って太平洋に注ぐ銚子の河口までを巡り、利根川およびその周辺のさまざまな景色を撮り下ろした44点で構成される最新作を発表する。

[展覧会情報]
タイトル:潜在景色 (英文タイトル Latent Scenery)
出品作家:石塚元太良、片山真理、下道基行、鈴木のぞみ、西野壮平、村越としや
会場:アーツ前橋 地下ギャラリー(群馬県前橋市千代田町5-1-16)
会期:2022 年 11 月 19 日(土)―2023 年 3 月 5 日(日)

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