『連帯する美術批評—1970–80年代の日本と世界の写真をめぐる トランスナショナル/フェミニズムの視点』

『連帯する美術批評—1970–80年代の日本と世界の写真をめぐる トランスナショナル/フェミニズムの視点』
『連帯する美術批評—1970–80年代の日本と世界の写真をめぐる トランスナショナル/フェミニズムの視点』
一人では潜れない深海に、きりとりめでる、久後香純、中村公彦の三人で挑んだ批評「連帯」の実践書。それぞれの論考に加え、過去の批評的実践を歴史化し、埋もれた仕事の功績に光を当てる本書は、写真文化・美術批評に関心を持つすべての読者にとって、新たな視座を開く一冊となるだろう。批評とは競争ではなく、協働によっても深められる。そのことを実践的に示した稀有な一冊。

¥ 2,750

予約・取り寄せはこちらから

数量

商品カテゴリー: ,

本書が扱うのは、フェミニズム、ジェンダー、トランスナショナルという三つの視点から見た、1970〜80年代の写真をめぐる批評の歴史。中村公彦は、日系三世アーティスト、トミエ・アライの写真実践を通じて、日本軍のアジア侵略や米国の覇権主義という主題が、太平洋を越えて響き合う様を描く。久後香純は、雑誌『anan』とディスカバー・ジャパンの広告が作り上げた「女の一人旅」という文化装置を読み解き、その希望と限界—白人女性モデルを至上とする人種的ヒエラルキーへの加担—を鋭く指摘する。きりとりめでるは、富山妙子、富岡多惠子、宮迫千鶴という三人の女性による、写真と旅をめぐる思索を接木し、ウーマンリブ的連帯との複数的な距離を持つ彼女たちの批評の軌跡をたどる。

そして、本書最大の特色は、三者それぞれの書き下ろし論考に加え、各自が独自の視点で選んだ「再掲論文」を併載している点にある。上野千鶴子が1984年に『朝日ジャーナル』へ寄せたメディア論、富岡多惠子が『カメラ毎日』での連載に記した写真批評、富山妙子が自著の「あとがきにかえて」に残した旅と制作をめぐる言葉。そして、フェミニスト・アートを推進した最も初期の批評家の一人、ルーシー・R・リパードによる論考「包括的交流」の、待望の本邦初訳。過去に埋もれていた言葉の数々を、現在の批評的視座から掘り起こし、光を当て直す試みだ。
三人の批評家は、議論を戦わせしのぎを削るのではなく、互いの関心を共有し、協働することを選んだ。競争ではなく連帯によって編まれた本書は、写真という表現に本来備わるジャーナリズム性—社会の表に出ない現実、歴史に埋もれた真実、時代の権力によってかき消された声が、意図せず記録されている力—を、三様の批評的まなざしを通じて浮かび上がらせる。

過去の批評的実践を歴史化し、埋もれた仕事の功績に光を当てる本書は、写真文化・美術批評に関心を持つすべての読者にとって、新たな視座を開く一冊となるだろう。批評とは競争ではなく、協働によっても深められる、そのことを実践的に示した稀有な一冊でもある。

書名:連帯する美術批評–1970–80年代の日本と世界の写真をめぐるトランスナショナル/フェミニズムの視点
著者:きりとりめでる、久後香純、中村公彦
ページ:162ページ(作品図版等カラー含む)
製本:ハードカバー
サイズ:A5変
言語:日英バイリンガル
デザイン:木村稔将
ISBN:978-4-908122-35-4
2026年10月刊行

目次

写真の潜在力と公共性
千葉由美子(T3 NEW TALENT 批評部門ディレクター)

Chapter 1

トミエ・アライの芸術における写真イメージの力|中村公彦

中村公彦セレクション
包括的交流─フェミニズムが1970年代アートに行った貢献
ルーシー・R・リパード

Chapter 2

ひとりが怖いなら死んじまえ ディスカバー・ジャパンと『anan』からみる文化装置としての女性一人旅
久後香純

久後香純セレクション
女性誌ニュージャーナリズムの同世代史
上野千鶴子

Chapter 3

写真のためにはなにも存在しない
富山妙子、富岡多惠子、宮迫千鶴による写真と旅をめぐって
きりとりめでる

きりとりめでるセレクション
あとがきにかえて
富山妙子

奢るなかれ現代の聖像製作者
富岡多惠子

世界をまなざす批判性
中村公彦

連帯する美術批評─批評の歴史化を目指して
久後香純

複数的な連帯との距離
きりとりめでる

中村公彦
大阪大学大学院人文学研究科芸術学専攻博士課程在学。日本学術振興会特別研究員(DC2)、桜美林大学非常勤講師。専門は日本の近現代美術史。慶應義塾大学文学部美学美術史学専攻卒業。セント・アンドリューズ大学美術史学科修士課程修了。ハイデルベルク大学共同研究センター933「Material Text Cultures」研究補助員(2022-23 年)。『Third Text』(2025)、『Review of Japanese Culture and Society』(2024)、『Woman’s Art Journal』(2022)などに論文を掲載。
WEB | https://sites.google.com/view/kimihikonakamura/home

久後香純
美術史研究者、日本学術振興会特別研究員PD(京都大学人間・環境学研究科)。ニューヨーク州立ビンガムトン大学美術史学科にて博士号取得。メディア論、ジェンダー論、視覚文化論を駆使しながら、戦後以降の日本写真史を中心にしてに研究に取り組む。主要論文に「「アノニマスな記録」としての写真─1960年代後半から70年代前半における写真のリアリズムについて」『映像学』(2022)等がある。

きりとりめでる
批評家。デジタル写真論の視点を中心に研究、企画、執筆を行なっている。著書に『インスタグラムと現代視覚文化論』(共編著、BNN新社、2018)がある。2022 年に「T3 Photo Festival Tokyo2022」のゲストキュレーター。最近の論考に「レフ・マノヴィッチ:ニューメディアの地
図作成法の発明者」『イメージ論の冒険者たち』(2026)がある。

レビューを投稿する

メールアドレスが公開されることはありません。 全て必須項目です。