荒木慎也『石膏デッサンの100年―石膏像から学ぶ美術教育史』

荒木慎也『石膏デッサンの100年―石膏像から学ぶ美術教育史』
荒木慎也『石膏デッサンの100年―石膏像から学ぶ美術教育史』
美大受験生たちの血と汗と涙の結晶
「石膏デッサン」とは、何だったのか?
石膏像を巡る苦闘の歴史がわかる、石膏デッサン研究の決定版!!

山田五郎のYouTube番組「オトナの教養講座」にて「目から鱗だらけの名著」と評されました!
YouTube本編は以下のサムネイルからご覧いただけます。

山田五郎オトナの教養講座

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美大受験生なら誰もが向き合う、あの白い石膏像。
しかし大学に入った途端、教授は言う。「石膏デッサンは創作の害になる」と——。
受験では必須、入学後は無用。この奇妙なねじれは、いつ、なぜ生まれたのか?
美術予備校における石膏デッサンの描画メソッドは、時代とともに進化を遂げており、短期間の集中的な修練で見違えるほどの優れたデッサンを生み出せるようになっている。しかし、いざ美術大学に入ってみると、石膏デッサンは軽視されているのが実情だ。受験では必須、入学後は不要——学生はその狭間で宙づりにされる。
はたして、石膏デッサンは必要なのか? この議論は、教育者側からも作家側からも繰り返されてきたが、いまだ決着を見ていない。「制作の基礎体力をつける筋トレだ」「ものを見る力を養うのにこれほどの教材はない」という肯定派がいる一方で、「アカデミズムの悪しき因習であり、自由な創造を阻害する」「技術はもはやアートには必要ない」という否定派の声も根強い。
本書は、こうした賛否の応酬から一歩引いて、「そもそもこの教育はどこから来たのか」を100年の歴史から問い直す試みである。前半(1〜3章)では石膏像そのものを、後半(4〜6章)では石膏デッサン教育を論じる構成をとり、これまで正体が不明とされてきた石膏像のオリジナル彫刻、日本における石膏像収集の歴史、近代と現代での石膏デッサンの違い、日本で石膏デッサン教育が普及した経緯など、知られざる事実を次々に明らかにしていく。
そこから見えてくるのは、石膏像の100年が、絶えざる価値観と制度の変転のなかで何度も新しい意味を与えられてきた、流動的な歴史だということだ。日本の美術教育は、西洋の価値観を一方的に受け入れたわけではない。輸入された石膏像をめぐって、独自の解釈と議論を積み重ねてきた——本書はその豊かな対話の軌跡を描き出す。
不毛な「石膏デッサン是非論」の先にある新たなアートの創造のためにも、これまで日の当たらなかった「石膏像と石膏デッサン」を深く掘り下げ、近代の美術教育が遺してくれた蓄積を反芻する。美術教育に携わる人はもちろん、美大受験を控えた受験生、日々制作と向き合うアーティスト、そして日本の近代美術史や西洋文化の受容史に関心を持つすべての方に読んでいただきたい一冊である。


【改訂版刊行の経緯】
本書は、2016年に三重大学出版から刊行された『石膏デッサンの100年』の改訂版です。初版300部という限られた部数だったため数ヶ月で完売となり、その後再販の予定もありませんでしたが、同書を届けるべき人がまだ世に多くいることを考え、著者と相談のうえ、アートダイバーにて改訂版を制作することとなりました。快く改訂版の販売を許諾してくださった三重大学出版に、この場を借りてお礼を申し上げます。


本の内容をもっと知りたい方はこちら

著者:荒木慎也
仕様:ソフトカバー(並製本)
サイズ:A5判変
ページ:256ページ
デザイン:木村稔将
ISBN:978-4-908122-08-8
2018年2月1日刊行


問題の所在
西洋画教育の中の石膏像
これまでの研究
本書の射程

1章 パジャント胸像とは何者なのか
2体のベレニケ胸像
「バシャント」から「パジャント」へ

2章 美の規範としての石膏像
古代美の規範としての石膏像
帝国主義と石膏像陳列場
美術アカデミズム
モダニズムとデッサン

3章 工部美術学校と東京美術学校の石膏像収集
明治初期の石膏像導入
工部美術学校の石膏像
東京美術学校の『旧台帳』
海外から輸入した石膏像
石膏製作業者の登場
使われた石膏像・使われなかった石膏像
ボストン美術館の寄贈品
コレクションの不連続性

4章 芸術の本質としてのデッサン
工部美術学校の擦筆画教育
黒田清輝の石膏デッサン論
東洋の線と芸術の本質
石膏デッサンのモダニズム
石膏デッサンの規格化
教育の根幹としての石膏デッサン

5章 反・石膏デッサン言説
批判言説の源流
美術アカデミズム・リバイバル
教官と学生の対立
野見山曉治の入試改革
宮下実の石膏デッサン論

6章 美術予備校の石膏デッサン
美術予備校の登場
デッサンの神様・安井曾太郎
石膏デッサンの「デッサン」
白い石膏デッサン
ポスト石膏デッサン時代
現代美術の中の石膏デッサン
21世紀の石膏デッサン教育

結び
あとがき
改訂版に向けての追記
引用資料
[巻末資料]東京藝術大学絵画科油画専攻入学試験問題

著者プロフィール
荒木慎也/ Shinya Araki
1977年名古屋生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。2013年に博士(学術)。東京大学教養学部国際ジャーナリズム寄付講座特任助教を経て、現在は成城大学、多摩美術大学、武蔵大学非常勤講師。専門は近現代美術史、美術教育学。


関連リンク
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