山本尚志日記|書×アートのゆくえ「アートの値上がりは、なぜ起こるのか?」
国内外のアートワールドで再評価の機運が高まる「書」。群雄割拠の現代書家のなかでも、「ART SHODO」を提唱し、「モノにモノの名前を書く」というコンセプチュアルなスタイルで、現代書と現代美術とを横断し強烈な存在感を放つのが山本尚志です。
アートダイバーでは、山本の珠玉の作品を収めた『うごく木 山本尚志2016‒2023作品集』を2024年2月に刊行しました。
作品集では作品のビジュアル面にフォーカスをあて、テキストは選び抜いたエッセンスのみを掲載するというミニマルな構成にしました。
一方で、山本は日々SNSでさまざまな情報を発信しています。自身の作品についてはもちろんですが、その話題はアートや書の世界の成り立ち、アーティストのサバイバル術、心構えなど多岐にわたり、広く読まれるべき文章だと強く感じました。
そこで山本に転載の許諾を得て、ここに掲載することとなりました。随時更新です。のんびりとご高覧ください。
編集:細川英一(ART DIVER)
アートを買う一つの魅力として、作品の「値上がり」ということがあります。
作品の価値が上がり、つまり、人気作家となり、売れていくには、いろいろなルートはありますが、プロのコレクターが意識しているのは「信用」です。どこのギャラリー所属か、大口のコレクターはいるのか、公立美術館に作品はあるのか、批評家はなんと言ってるのか、などなど。
ですから、全く芽の出てないシロートのアーティストの作品をプロのコレクターが買うということは絶対にと言っていいほどありません。
しかし、「これは!」と思うシロートに声をかけて、「お前をシンデレラにしてやろう」というコレクターもなかにはいます。つまり、アーティストを育成していく、という立場です。
だいたいのコマーシャルギャラリーは、それを考えています。つまり、自分がピックアップしたシロートは、シンデレラになるのか、それともバケの皮が剥げてカボチャの馬車に戻るのか、これは結局そのアーティストの信用によるとしか言えない。
僕の場合は、そのための審査を数か月にわたり受けました。まず、数千あるうちの作品から100点を選び、それを時系列に並べて作品集が成立するのか、これをやらされました。それから、いろいろな美術関係者の方に作品を見てもらい、目利きのプロの立場から審査されました。つまり、今 ART SHODOの運動で若い作家にやっているのと同じことを、自分もされたわけです。
で、8年前、いよいよプロになれるかなれないかのとき、プレッシャーで入院しましたが、結局は完走して、作品集(『山本尚志 2004-2016作品集』2016年、YKG publishing)が出ました。
今では書店でも売り切れ状態です。現在、2冊目(『うごく木 山本尚志2016‒2023作品集』2024年、アートダイバー)が進行中です。またお披露目します。
作品が値上がりすると、もう友人には勧められません。僕も最近は、プロのコレクターの方以外にはおススメしていません。彼らのもう一つの狙いは自分の目利きとしての能力が正しかったかどうかの「見極め」にあるのです。その厳しいチェックを、今もなお、受けているところなのです。もう慣れましたけどね。
昔の話をすると、僕は21歳の時に世界的アートコレクターの佐藤辰美に作品を大量に青田買いされてから、それがきっかけとなり、この世界に入ったようなものです。
今では、それを知る人たちから応援を受け、現在10以上のコマーシャルギャラリー、デパート、オルタナティブスペースより支援をそれぞれ受けています。また、仲間の作品も見てくださるようお願いもしてきました。
もうね、こうなると、責任感しかなくて。
また来年も早い時期に個展があるのですが、それに向けて今必死になってやってます。今日もこれからアトリエです(^^)
引き続き皆さま、よろしくお願いします。
(2023年11月15日、山本尚志Facebook投稿より編集。文責細川)
山本尚志Facebook
https://www.facebook.com/hisashi.yamamoto.3910?locale=ja_JP
関連記事
